
三鷹市上連雀の魅力|歴史・廃線跡・公園・交通・住みやすさ
三鷹市上連雀の魅力を探る
江戸の開拓史、消えた鉄道、緑と文化が息づく住宅街
歴史を知ると、いつもの散歩道が違って見えてくる。
江戸の大火から生まれた「連雀」という地名
「上連雀」という名前をたどると、東京の中心部で起きた大火災に行き着く。1657年の明暦の大火を受け、江戸・神田連雀町の人々が移り住んで武蔵野の土地を開墾したことが、「連雀」の地名の背景にある。三鷹市の資料では、上連雀村も江戸時代の新田開発によって成立した村の一つに数えられている。つまり「連雀」は、単に鳥の名を連想させる響きではなく、江戸から武蔵野へ生活の場を移した人々の歴史を伝える名前なのだ。
市の景観資料によれば、上連雀と下連雀の「上」「下」は、京都に近い側を「上」、江戸に近い側を「下」とする伝統的な呼び方に由来する。いまは地続きの住宅地として見える地域にも、かつての人々が土地を位置づけた感覚が残っている。さらに1889年には、上連雀・下連雀を含む10の村が合併して三鷹村が誕生した。普段何気なく書く住所が、江戸の災害と明治の自治体再編をつないでいる。
線路が消えて散歩道になった、堀合の不思議
上連雀一丁目の「堀合(ほりあわい)遊歩道」は、この街を歩くならぜひ知っておきたい場所だ。桜並木を中心とした緑の小道だが、その成り立ちは普通の公園と少し違う。市の案内によれば、ここは廃線となった国鉄武蔵野競技場線の線路跡に整備されたもの。三鷹の北側には、かつて野球場「東京スタジアム・グリーンパーク野球場」があり、その開設に合わせて鉄道のルートも変更された。野球場が閉鎖され、路線が廃止された後、線路の一部は人が歩く道として残った。
歩道の緩やかな曲線は、かつて鉄道が通っていた土地の記憶とも重なる。近くの堀合児童公園も同じ鉄道跡に関わる場所で、三鷹市は中央線以北の市内で最も広い公園と紹介している。「堀合」という呼び名自体もこの周辺の古い地名。いまの穏やかな日常と、昭和の野球場や線路の記憶が、一つの緑道で出会っている。
上連雀の緑は、大きな公園も小さな公園も
この地域の緑を語るなら、上連雀六丁目14番1号の連雀中央公園は外せない。三鷹市が「市内屈指の広さを誇る公園」と紹介する園内には、体を動かせる広場、健康器具、円形ステージ型のベンチがある。2026年度には夏季限定の水遊び施設もオープンした。公園の南側に立つ大きなイチョウとヒマラヤスギは、開園前からこの地にあった木々だという。新しく整備された施設と、昔からそこに根を張る樹木が同じ風景の中にある。
一方、上連雀一丁目の堀合児童公園、四丁目の上連雀児童公園、九丁目の上連雀くすのき児童遊園など、町内には身近な公園も点在する。休日に大きな公園へ行く楽しさと、日々の散歩で小さな緑に出会う楽しさは別のもの。上連雀では、その両方を意識して街を見てみたい。
江戸の建物に出会う、井口院の時間
上連雀七丁目には、地域の歴史をさらに深く感じられる寺院・井口院(いこういん)がある。三鷹市の広報によると、井口院は上連雀村の開発が進んだ1669年ごろに創建されたとされ、村の開発者である井口家と近い関係にあったと伝わる。境内の地蔵堂の一部は、建築様式の調査から江戸時代の享保期(1716~1736年)にさかのぼると考えられ、市内に現存する最古級の建造物として紹介された。
もともとは山門だったとみられる建物が、後に地蔵堂として姿を変え、現在まで受け継がれてきたという点も興味深い。境内には、江戸時代の大山詣りに関わる巨大な木太刀も残る。歴史というと城跡や大きな資料館を思い浮かべがちだが、住宅街の寺院にこそ、何世代もの暮らしと信仰を伝えるものがある。
本と学び、子どもの体験が身近にある
上連雀八丁目3番3号には、三鷹図書館(本館)がある。2026年3月の市広報によれば、市内最大の約45万冊を所蔵し、児童文学作家・神沢利子の作品に親しめる「くまの子ウーフコーナー」や、三鷹の郷土資料を扱う資料室も備える。買い物や通勤とは別に、資料を調べたり、親子で本を選んだりする時間を身近につくれる施設だ。
同じ上連雀七丁目には、交通ルールを体験しながら学べる「上連雀交通公園」もある。信号機や標識を備えた模擬コースで、自転車や足踏み式ゴーカートを活用した交通安全指導が行われている。図書館で知識を深め、交通公園では実際に体を動かして学ぶ。子どもと大人がそれぞれの方法で学べる場所が町内に存在している。利用日時や休園日は訪問前に最新の案内を確かめたい。
三鷹駅に近い場所と、バスを活用する場所
住まい探しで大切なのは、「上連雀」と一括りにしないことだ。上連雀は一丁目から九丁目まであり、三鷹駅に比較的近いエリアと、南側へ広がるエリアでは日々の移動の仕方が変わる。鉄道利用を重視するなら実際の徒歩経路を確認したいし、駅から離れた場所ではバス停の位置、運行経路、本数を含めて考えたい。
たとえば市が案内する上連雀分庁舎へのアクセスでは、三鷹駅南口からバスを利用して「三鷹警察署前」で降りる方法などが示されている。バスの使いやすさも暮らしを考える一つの手掛かりだ。ただし同じ町内でも停留所までの距離は異なる。駅への所要時間を町全体に当てはめず、候補となる住所から平日朝や夜の移動を調べることが重要になる。
上連雀を歩いて、暮らしを選ぶ
上連雀の魅力は、何か一つの観光名所に集約できないところにある。江戸の新田開発を伝える町名、昭和の鉄道跡を歩ける小道、歴史を残す寺院、古い大木のある公園、地域の図書館。異なる時代のものが、毎日の暮らしの距離感でつながっている。
住みやすさを判断するときは、気になる物件の周辺を昼と夜、平日と休日に歩いてみよう。通学や買い物の動線、交通量、道路の歩きやすさ、公園までの距離、そして自治体が公表するハザードマップや学校区を住所ごとに確認することも欠かせない。上連雀の歴史を知ってから街を歩けば、いつもの道も少し違って見えるはずだ。
